O脚に関する過去論文

    下記は、当店の松尾が、過去に学会にてO脚について行った発表の抄録です。

    かなり以前のものですが、O脚矯正を考えていくうえでの基本となるポイントについて述べており、 それは今も変わらないため、O脚矯正に関心のある方に、ご参照いただけたらと思います。

    *下記発表は「コーチングクリニック」(ベースボールマガジン社)2003年12月号に掲載されました。

  • 2002年   第3回スポーツ整復療法学会
  • シンポジウム 《スポーツ整復療法学領域におけるスポーツ・ポダイアトリーの内容と技術》
  • シンポジストによる発表 「O脚矯正とポダイアトリー」

簗田(松尾)織絵 (キョウコプロポーションクリニック)

  • キーワード:O脚矯正、機能的O脚、バイオメカニクス、機能的足底板

1 「O脚矯正とポダイアトリー」

「O脚矯正」といわれるものは、10数年前より専門で行う店が登場し、主にエステティックサロンを中心に美容的観点から開始されました。現在はむしろカイロプラクティックや「整体院」等で施術メニューに取り入れられ、「美容整体」などの名称で普及していますが、「O脚」に関する考え方も施術方法も統一されたものがないのが現状です。 私は約10年前より、「O脚X脚矯正」専門店に勤務し、主に20代を中心とした若い女性の脚と関わってきました。その中から、私は足部の状態が脚全体の形に及ぼす影響の大きさに注目し、米国製の機能的足底板のオ―ダーを取り入れました。4年前から石膏による足部のキャスティングと下肢のバイオメカニクス的検査に基づく足底板オーダーを行っていますが、この経験から、「O脚矯正」を、ポダイアトリーにおける下肢のバイオメカニクス的視点から見る重要性に関して触れたいと思います。

2 「市販のO脚用グッズ」

O脚と足部の関係を取り扱ったものとして、しばしば登場するのは、足部や踵部の外側を高くし足が内側へ傾斜するように意図された、「O脚用」のインソール、サンダル、ストレッチングボードなどです。今やインソールコーナーの一角を占め、かなり一般化しています(ただし傾斜角度は製品によって異なリます)。これらは、O脚変形を伴う変形性膝関節症の患者さんの、内側膝関節痛を軽減させるため整形外科で用いられる、外側楔状足底板から発想されたものと考えられます。 しかし、当店に「O脚」を気にしていらっしゃるお客様の脚の形は実に様々で、「O脚」と言う言葉の捉え方も、実際の脚の状態も、個人によって異なっています。その多様性を理解せず、「O脚」と自覚する人々が、外側が高くなったインソールやサンダルを「O脚用」として装着することには、問題があるのではないかと考えます。

3 「整形外科によるO脚」

O脚は、下肢のアライメント異常の一つであり、整形外科では主に「内反膝」を指し、膝関節の前額面での変形のうち、外側へ凸となるもの、とされています。そのためO脚は3歳以下のごく小児時の装具療法でのみ矯正が可能であり、成人のO脚は手術以外では直らないとされています。 しかし、一般的にはO脚という言葉は、立った時に膝の間に隙間が開いている「O字型の脚」を意味して使われているのが現状です。 このような「O字型の脚」を指すO脚は、“膝関節の前額面での内反変形”だけで形成されるのではありません。

4 「構造的O脚用と機能的O脚」

「O字型の脚」は、前額面だけでなく、水平面、矢状面でのアライメントも関与しますし、また、骨の形だけでなく、姿勢の変位による関節のアライメント変化にも大きく影響されます。 そこで、どの身体面でどんな要素が「O字型の脚」を作っているのか、下肢のバイオメカニクスの観点から考えると、「O字型の脚」は大きく「構造的O脚」と「機能的O脚」の2つに分類できることがわかります。 構造的O脚は、スライド4の左の写真のように、主に「前額面での膝関節の内反と脛骨の内湾」という、骨構造上の問題から成っています。 一方、右の写真のような機能的O脚は、主に水平面での股関節の内旋位と距骨下関節の回内位、矢状面での骨盤前傾と膝関節過伸展位、という主に軟部組織のアンバランスによる下肢の関節の位置・配列異常(アライメント異常)から成っています。 「機能的O脚」は「姿勢的O脚」、“見かけ上のO脚”とも言われており、整形外科ではO脚とはされず、治療対象にはなっていないと思われます。しかし、このタイプは、若い女性にしばしば見られ、このようなタイプの「O字型の脚」こそが「O脚矯正」の対象となります。

5 「機能的O脚の特徴」

機能的O脚の特徴は、①股関節の内旋位、②骨盤の前傾と腰椎前湾増強、③膝関節の過伸展位、そして④距骨下関節の過回内位です。 スライドの写真は機能的O脚の典型例です。機能的O脚であっても、骨の曲がった構造的O脚に負けないくらい膝の間にすき間があり、また明らかな異常姿勢を呈しています。 腰部、膝、足部などに疲労や疼痛など愁訴が発生する可能性も十分考えられ、又もしこのような脚の人がスポーツを行った場合、パフォーマンスの低下や怪我の誘発も十分考えられます。そのため機能的O脚も、広義のO脚として捉え、美容上のみならず、疾病予防上も運動機能上もその存在を認識する必要があると私は考えます。

6 「機能的O脚の特徴1」

次に機能的O脚の特徴を具体的に見ていきます。 立位では股関節の内旋位が固定され、膝蓋骨が顕著に内側を向いています。これにより上前腸骨棘・膝蓋骨中心・脛骨粗面を結ぶ角度の補角であるQ角が増強し、大腿膝蓋関節に外方への牽引力がかかりやすくなります。実際に当店の来店者には、矯正前に膝関節内側や膝蓋骨周囲の痛みを訴える方が見られ、矯正によって解消される例も多いです。

7 「機能的O脚の特徴2・3」

横から立位姿勢を観察すると、程度の差はありますが、腰と膝を強く反らし、お腹を突き出して、脊柱だけでなく体全体がS字に近いカーブを呈しています。これに伴い下腹部腹筋の低下もよく見られます。腰痛は膝関節痛以上に来店者に多く見られ、またO脚矯正で最も解消されやすい愁訴です。

8 「機能的O脚の特徴4」

両足の内側をそろえて立った時、足部を後面から見ると、踵や内くるぶしの間にすき間が開いていることがしばしばあります。これは距骨下関節が立位により最大回内位をとった際、距骨・舟状骨が内方に落ち込む程度が強いためと考えられます。このように、機能的O脚は、足部の状態と相互に関連するため、足病医学(ポダイアトリー)上も注目すべき形態です。 このような「機能的O脚」の人が、外側が高くなった傾斜を持つインソールを使用すると、一見両脚が近づいて見えるでしょうが、距骨下関節の回内位がより助長されることで、内果や舟状骨の内方突出と下肢全体の内旋位を増強して、「機能的O脚」の状態が進行すること、距骨下関節へ本来の回内可動域を超えるような無理な圧力が加わり疼痛の発生へつながること、が考えられます。 当店では、必要以上の距骨下関節の回内を抑制することで「機能的O脚」の進行を防止し、「O脚矯正」の効果を高めるために機能的足底板を使用しています。

9 「機能的O脚の矯正例1」

機能的O脚の矯正例をご覧ください。膝上下のライン、横からの姿勢が改善されました。Q角も減少しています。

10 「機能的O脚の矯正例2」

右の写真は機能的O脚は改善されましたが、構造的O脚が残っています。お客様はしばしば「膝がつく」ことを重視しますが、限界があることを理解していただくため、どの程度まで矯正が可能かを事前に伝え、納得していただいた上で矯正を受けていただくことが重要になります。

11 『「O字型の脚」と下肢のバイオメカニクス検査』

「O字型の脚」としてのO脚を、下肢のバイオメカニクスの視点から捉えることは必要不可欠です。この視点から「O脚矯正」がどの程度可能か或いは不可能か、が判断できるからです。ほとんどの「O字型の脚」は、構造的O脚の要素と、機能的O脚の要素の両方を持っています。構造上の問題は矯正不可能です。そこで骨構造上の問題がどの程度関与しているかは重要な検査項目となります。矯正が可能な軟部組織の問題がどの程度あるか、残念ながら矯正が不可能な骨の問題がどの程度あるかを、お客様にお伝えし、矯正できる範囲を明確に示すことが「O脚矯正」において必要であると考えています。 骨構造上の問題を示す検査項目は多数ありますが、代表的なものを3つ取り上げます。

12 「O字型の脚と」下肢のバイオメカニクス検査1 下腿の内湾角度

これは脛骨の前額面での曲がり具合を示します。米国の文献では0~4度が正常とされていますが、日本人の場合、この値よりも高い値の人が多いと思われます。10度以上の内湾がある場合、軟部組織の問題よりも骨構造上の問題が強いO脚になると、私は感じております。この場合、矯正後も下腿の下方3分の1、足首付近に湾曲した感じが残存します。

12 「O字型の脚」と下肢のバイオメカニクス検査2 下腿外捻角度

これは脛骨の水平面でのねじれを具合を示します。米国での正常値は13~18度です。O脚矯正の妨げになる強い外捻は28.9度以上と私は考えています。強い下腿外捻の見られる人は、ほとんどの人が小児の頃の座位生活が床中心で、いわゆる「ぺちゃんこ座り」の習慣者が多いです。

13「O字型の脚」と下肢のバイオメカニクス検査3 股関節内旋・外旋角度

股関節伸展位と屈曲位で内旋・外旋角度を調べ、正常可動域である各45度以上に満たない箇所をチェックします。制限のパターンは様々ですが、伸展位と屈曲位ともに同じパターンの著しい制限がある場合は、骨構造上の制限が存在する可能性があります。強い下腿の外捻がある場合、しばしば相補的に股関節外旋制限が存在します。股関節外旋制限の構造的要素は、大腿骨の前捻角の強さであると推測できます。

14 【まとめ】

「機能的O脚」も広義のO脚として捉える必要性がある。一人一人のO脚(「O字型の脚」)が、どのような要素から成り立っているのか、バイオメカニクス的視点で見極めた上で、目的を明確にし、それに合った足底板を使用することが必要である。バイオメカニクス検査は、O脚(「O字型の脚」)を分析する有用な手段である。 (2002年10月25日 東京商船大学講堂にて)

上記の発表は「コーチングクリニック」(ベースボールマガジン社)2003年12月号に掲載されました。